Practical Guide to SAP CO-PC プラクティカルガイド SAP CO-PC
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【本書は、SAP S/4HANAのCO-PCはカバーしておりません。また、品目元</p><p>帳(CO-ML)もカバーしておりません。】SAPの製品原価計算(CO-PC)モジュールは、他モジュールとの密接に統合しているため、しばしば最も難しい領域だと言われます。本書では、CO-PCを理解する上で、必須の要素となる、業務プロセス、マスタ、コンフィグ(カスタイマイズパラメータ)について解説しています。CO-PCの導入や保守をするときに有用なガイドとなるように、スクリーンショットや事例を多く用いています。また、CO-PCと他モジュールの統合内容についても説明していますので、コンフィグやマスタもより深く理解することができます。
- CO-PCで計上される原価の流れの解説
- スクリーンショットやステップバイステップの事例
- CO-PCのカスタイマイズパラメータの紹介
- 期末処理の詳細な説明
読書例
2-1 利益センタ
利益センタは内部会計目的で使用されるもので、通常、製品ライン、部門、地域、機能などに見立てて作成します。利益センタには収益と費用を計上することができ、それにより利益センタ別のP/Lを作成することができます。
SAPには複数の元帳があります。代表的なものはFI(財務会計)モジュール上の総勘定元帳や仕入先や得意先毎の補助元帳です。COモジュール上にも複数の元帳があります。利益センタへ費用や収益を計上すると、利益センタ会計用の元帳に転記されます。そうした転記は他の元帳への転記と同時に行われます。例えば、SD(販売管理)モジュールで請求書を登録すると、FIモジュール上で売上を計上する財務会計伝票が転記されるとともに、利益センタ会計伝票も転記されます。利益センタ会計を有効にするためには、Tr-cd: OKKPまたは以下のIMGメニューを使用します(IMGメニューを表示するにはTr-cd: SPROを使用します)。
管理会計 • 管理会計一般 • 組織 • 更新: 管理領域.
利益センタは、品目マスタや原価センタに割り当てられています。例えば、ある製品の品目マスタに製品ラインに見立てた利益センタを設定します。そうすることで、その製品の売上がG/L(財務会計(FI)上の総勘定元帳)に計上されたとき、その利益センタにも売上が計上されます。また、資産、債務、債権、在庫のような貸借対照表の項目にも割り当てることができます。
利益センタはTr-cd: KE51で登録します(図 2.1参照)。利益センタは管理領域に属するマスタです。複数の管理領域を管理している場合、システム上に同じコードの利益センタが複数存在する可能性がありますが、それらは別のものとして扱われます。
利益センタマスタには会社コードタブがあり、その利益センタを使用する会社コードを割り当てします。Tr-cd: KE56を使用すると、複数の利益センタの会社コード割当を一括で行うことができます。
図 2.1: 利益センタ
これはお作法のようなものですが、会社コードごとにダミーの利益センタ「999」を登録する必要があります。ダミー利益センタは、売上計上時などに自動的に利益センタを導出できないときの計上先となります。ダミー利益センタの残高は、月末と年末に確認し、しかるべき利益センタに転記する必要があります。ダミー利益センタはTr-cd: KE59で作成します。
パートナ利益センタは、会社間取引、あるいは、会社内取引(会社内の利益センタをまたがる取引)における相手先の利益センタのことで、そうした取引で生じる費用や収益を適切に管理するためのものです。例えば、ある利益センタから別の利益センタに在庫転送すると、利益センタ会計伝票が登録されますが、その伝票の明細に相手先の利益センタが記録されます。
パートナ利益センタは相手先が同じSAP内で管理されている場合、購買発注伝票や受注伝票の情報から自動登録させることができます。同じSAPで管理されていない場合でも、誘導規則と呼ばれるカスタマイズパラメータを使用して、得意先、品目、相手先の会社コードなどの値によって、同様に自動登録させることができます。
利益センタの分析期間(有効期間)
利益センタを登録するとき、分析期間(有効期間)に気をつけてください。原価センタを登録するときに利益センタを割り当てますが、原価センタの期間より利益センタの期間が短いとエラーになります。
責任ユーザと利益センタGroupは必須項目です。
会社コードタブでは会社コードに割り当てます。住所タブと通信タブの項目は任意入力項目ですが、利益センタの責任者の連絡先などを管理することができます。
利益センタの有効化
入力後、必ず有効化するようにしましょう。保存するだけでは有効化されていません。
2-1-1 利益センタグループ
管理領域毎に利益センタ標準階層と呼ばれる階層構造のデータが作成されます。標準階層以外にも同様の階層データを複数持つことができ、それらは代替階層と呼ばれます。標準階層と代替階層を総称して利益センタグループと呼びます。レポート要件や配賦目的で利益センタグループを定義します。利益センタグループの構成はWindowsのフォルダとファイルの関係に似ていて、フォルダが利益センタグループで、ファイルが利益センタです。
利益センタグループの事例
利益センタグループの事例として、事業部毎に設定する例を紹介します。事業部内の各部署を利益センタとして作成し、それらを利益センタグループで階層化します。例えば、P& G社であれば、ヘルスケア事業部や日用品事業部などがありますが、まず階層のルートとなる利益センタグループを作成し、その直下にそれら事業部を表す利益センタグループを作成します。さらに、それぞれの配下に各事業部の各部署を表す利益センタグループ、利益センタを設定するといった要領です。
利益センタ標準階層はTr-cd: KCH1、KCH5N、KCH6Nで、利益センタ代替階層はKCH1、KCH2、KCH3で登録、変更、照会します(図 2.2参照)。
図 2.2: 利益センタ標準階層